預金口座・株式の名義変更手続について
預金口座の相続手続き
口座名義人の死亡の事実を銀行や郵便局が知った場合、特定の相続人から預金を引き出されるのを防ぐため、銀行や郵便局は被相続人の預金口座を凍結します。
これは、遺産分割等により預金の取得者が確定しない段階において法定相続分に従って払戻しをすると、銀行が相続人間のトラブルに巻き込まれる危険があるためです。
つまり、預金を相続した相続人が口座を解約したり、口座内のお金を自由に利用するためには、相続人名義に変更する手続が必要になります。
ただ、銀行側が被相続人の死亡の事実を知らない間は、被相続人名義の口座から出入金をすることは出来ますが、使途の不明なお金が口座から引き出されていた場合、その後の相続手続きの中で相続人間でのトラブルの原因となることから、早めに手続をすることをお勧めします。
とはいえ、被相続人の葬儀費用の支払いなど、どうしてもお金を必要とする場面があると思います。その場合には、後でトラブルにならないよう、いくら費用がかかったのか明確にしておく必要があります。
名義変更手続に必要な書類
全ての手続に共通する書類
- 金融機関所定の払戻し請求書
- 被相続人の預金通帳及び届出印
遺産分割協議による場合
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍謄本・改製原戸籍含)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書(または金融機関所定の同意書)
- 相続人全員の印鑑証明書(発行3ヶ月以内)
遺言書による場合
- 遺言書
- 相続人の戸籍謄本(除籍謄本)
- 預金を引き継ぐ相続人の戸籍謄本
- 預金を引き継ぐ相続人の印鑑証明書(発行3ヶ月以内)
- 遺言執行者が指定されいる場合は遺言執行者の印鑑証明書(発行3ヶ月以内)
調停・審判による場合
- 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本
- 預金を引き継ぐ相続人の戸籍謄本
- 預金を引き継ぐ相続人の印鑑証明書(発行3ヶ月以内)
株式の相続手続き
被相続人が有していた株式の名義をそのままにしていた場合、企業からの配当金の支払いや各種の通知を受け取ることができません。
そのため、株式を発行している会社や証券会社で相続人名義に変更手続をする必要があります。この株式の名義変更は、被相続人が有していた株式の種類によって手続が異なります。
上場株式の場合
上場株式とは、証券取引所を介して取引されている株式のことをいいますが、この場合、証券会社と株式を発行している会社双方で手続をする必要があります。
証券会社での手続
まず、被相続人名義の株式の取引支店に口座開設者が亡くなったことを伝え、名義変更に必要な書類を取寄せます。
名義変更手続に必要な書類
全ての手続に共通する書類
- 口座開設者死亡届
- 相続上場株式等移管依頼書
遺産分割協議による場合
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍謄本・改製原戸籍含)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 遺産分割協議書(または相続人全員の同意書)
- 相続人全員の印鑑証明書(発行3ヶ月以内)
遺言書による場合
- 遺言書
- 相続人の戸籍謄本(除籍謄本)
- 株式等を引き継ぐ相続人の戸籍謄本
- 株式等を引き継ぐ相続人の住民票
- 株式等を引き継ぐ相続人の印鑑証明書(発行3ヶ月以内)
- 遺言執行者が指定されいる場合は遺言執行者の印鑑証明書(発行3ヶ月以内)
調停・審判による場合
- 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本
- 株式等を引き継ぐ相続人の戸籍謄本
- 株式等を引き継ぐ相続人の印鑑証明書(発行3ヶ月以内)
口座移管手続
上記の書類を揃えて証券会社に提出しますが、ここで厄介なのが、原則的に被相続人名義の証券口座をいきなり解約・換金して相続人に払戻すことができないことです。
この場合、被相続人名義の口座内の株式等を相続人名義の口座に移し替え、その後、相続人が口座内の株式等を売却したり、保有したりできるようになります。
つまり、相続人への名義変更と言っても、実際は相続人名義口座への「口座移管手続き」を証券会社に対して請求することになります。
そこで、相続人がその証券会社にご自身名義の口座を持っていなければ、新たに相続人名義の口座を開設しなければなりません。
そのため、株式等の相続手続きには、証券会社に相続人名義の口座がなければその後の手続を進めることが出来ないのです。
株式を発行している会社での手続
証券会社での取引口座の変更手続が終了した場合、株式を発行した会社の株主名簿を被相続人名義から相続人名義に変更する手続が必要になります。
この手続は、基本的には証券会社が代行して手続をしてくれます。
非上場株式の場合
非上場株式とは、証券取引所を介さずに会社自身が発行している株式をいいますが、株式を発行している会社ごとに手続が異なるため、直接会社に問い合わせ、それに沿った手続を進めていく必要があります。
銀行預金・株式の相続手続きを司法書士に依頼することができるの?
もちろん、相続人自ら金融機関の所定の払戻し請求書・遺産分割書・戸籍謄本等を提出し、金融機関の窓口で手続をすることもできます。
また、証券会社及び株式を発行する会社に対しても、名義変更に必要な書類を提出し手続することもできます。
しかし、ご自身で金融機関、証券会社及び株式を発行する会社から書類を取り寄せ、被相続人及び被相続人の戸籍を集め、遺産分割協議書を作成し、相続人と全員とやり取りをして印鑑を押してもらうことは、とても時間と労力を費やします。
そのような場合、被相続人名義の預金口座の名義変更・払戻し・解約、株式等の証券口座の口座移管手続等の一連の手続を司法書士に依頼することができます。
これは、司法書士の業務である「当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務(司法書士法施行規則第31条第1号)」に基づくためです。
ただ、法律で正当に司法書士の業務として認められた銀行預金等の名義変更手続ですが、なかには代理人からの請求に応じていただけない金融機関もあります。その場合であっても、必要書類の収集・書類の作成・銀行窓口へ同行など、最後までお手続きのサポートをさせていただきます。