相続土地国家帰属制度
新たに相続土地国庫帰属制度が始まりました!
2023年4月7日、近年社会問題化している「所有者不明土地問題」の発生を予防するため、相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が施行されました。
ここでは、相続土地国庫帰属制度の内容や手続きの流れ、手続きを行う上での注意点を解説します。
相続土地国庫帰属制度創設の背景
相続土地国庫帰属法が創設されたのは、近年地方の土地や農地や森林など相続人が、その土地を適切に管理することで出来ず、相続した土地を手放したいと考える人が増加しているためです。
特に土地を望まずに相続したもしくは遺贈を受けた所有者は、管理を怠ることが多く、そのまま放置してしまっているケースが少なくありません。相続土地国庫帰属法は、相続した土地を国が所有したり管理したりする手続きを定めることで、このような状況を少しでも改善するために新たに法制度化されました。
また、相続土地国庫帰属制度には、所有者不明土地の発生を予防する目的もあります。
相続人が土地を相続した後にそのまま放置してしまい、さらに何世代にも渡って相続が発生し、現在の相続人を把握することが難しくなったり、相続人の居住地を特定できないなどの問題が発生し、再開発などの土地の有効活用に大きな支障を生じさせてしまっています。
相続土地国庫帰属の手続きについて
ここからは、相続土地国庫帰属制度の実際の手続きについて申請方法やフローを解説します。
(1)申請ができる人
相続土地の国庫帰属を申請することができるのは、以下の要件を満たした人のみです。
- 相続人
- 相続または遺贈により、土地または土地の共有持分を取得したこと
そのため、土地または土地の共有持分の遺贈を受けた人でも、相続人でなければ相続土地の国庫帰属は申請できません。
また、土地を生前贈与で譲り受けた相続人も、要件である相続や遺贈で土地を取得したわけではないため、同じく国庫帰属の申請はできません。
ただし、相続人でない土地の共有者は、他の共有者が相続人として相続または遺贈により土地の共有持分を取得した場合、その相続人と共同であれば、例外的に国庫帰属を申請することができます。
(2)相続土地の国庫帰属の申請先
相続土地の国庫帰属の申請先は、土地の所在地を管轄する法務局になります。
(3)相続土地の国庫帰属の申請手続きの流れ
①事前相談
土地を管轄する法務局で事前に相談を受けることができます。遠方の土地の場合には、お近くの法務局(本局)で相談も可能です。
②申請書・添付書類の持参又は送付
申請書および必要書類を管轄法務局に持参するか郵送で提出します。
③審査手数料の納付
相続土地の国庫帰属を申請する際には、土地1筆当たり1万4000円の審査手数料を納付します。
④要件審査・実地調査
法務局担当官が、申請書類を審査します。また、必要に応じて対象土地の実地調査も行われます。
⑤承認
却下事由も不承認事由もない場合は、申請が承認されます。申請が承認された場合は、承認の旨と負担金額が申請者へ通知されます。
⑥負担金の納付
申請者は、負担金額の通知を受けた日から30日以内に決められた負担金を納付しなければなりません。負担金の納付を怠った場合、承認決定が失効します。
⑦国庫帰属
申請者が負担金を納付時したときをもって、土地の所有権が国庫に帰属します。所有権移転登記は国において行います。
相続土地国庫帰属を申請できる土地
国庫への帰属が認められるためには、法令で定める却下事由と不承認事由のいずれにも当てはまらないものに限られます。
1 国庫帰属の申請ができない土地(申請段階で直ちに却下となる土地)
以下の土地は、国庫帰属の申請自体が認められません(相続土地国庫帰属法2条3項)。
- 建物が建っている土地
- 担保権または使用・収益を目的とする権利が設定されている土地
- 通路その他の他人による使用が予定されている土地として通路用地、墓地、境内地、水道用地、用悪水路、ため池が含まれる土地
- 特定有害物質により汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
2国庫帰属の承認がでけいない土地(審査の段階で該当すると判断された場合に不承認となる土地)
以下の土地は、国庫帰属の申請が不承認となります(相続土地国庫帰属法5条1項)。
- 崖(勾配30度以上かつ高さ5メートル以上のもの)ある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用または労力を要するもの
- 土地の通常の管理または処分を阻害する工作物、車両、樹木そのほかの有体物が地上に存する土地
- 除去しなければ土地の通常の管理または処分をすることができない有体物が地下に存する土地
- 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理または処分をすることができない以下の土地
- 他の土地に囲まれて公道へ通じない土地
- 池沼・河川・水路・海を通らなければ公道に出ることができない土地、または崖があって公道と著しい高低差がある土地
- 所有権に基づく使用または収益が厳に妨害されている土地(軽微なものは除く)
- そのほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する以下の土地
- 災害の危険により、土地や土地周辺の人、財産に被害を生じさせるおそれを防止するため、措置が必要な土地
- 土地に生息する動物により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地
- 適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が必要な森林
- 国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
- 国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地
最後に
ここでは、2023年4月7日から施行された「相続土地国庫帰属制度」について記述しました。
司法書士は、申請者本人に代わって申請書類の作成を行うことができます。
相続土地国庫帰属制度は、まだできたばかりの制度で全ての土地について認められるわけではありません。
そのため、お手続きの際には専門家に相談することをお勧めします。
フロンティア司法書士事務所にご相談してください
当事務所では、相続登記、生前対策や相続発生後の手続きなど幅広く対応しておりますので、お気軽にご相談してください。