遺言書の検認手続き
亡くなった方が遺言書を遺していた場合、公正証書遺言を除き、家庭裁判所の検認手続きが必要となります。
公正証書遺言は、公証人の面前で作成され、改ざんや偽造される恐れがないため検認手続きが不要です。
相続財産の中に不動産や預貯金が含まれており、遺言書の中に記載があれば、家庭裁判所の検認手続きを経ない限り、不動産及び預貯金の名義変更の手続きに利用することができません。
そのため、亡くなった方のご自宅や銀行等の金庫から遺言書を発見した場合、家庭裁判所に検認手続きを申立てる必要があります。
遺言書の検認の効果と内容
遺言書の検認手続きは、あくまで遺言書が法律上要求される形式が整っているかを判断するだけであり、遺言書の内容が有効なのか無効かまでを判断するものではありません。
そして、家庭裁判所の検認を経たからといって、遺言書が有効だと判断されるものでもありません。
つまり、「検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続であって、遺言書自体の有効・無効を判断する手続ではありません。」
もし、遺言書の内容が有効か無効かを争う場合、別途訴訟手続きで争うことになります。
遺言書の検認手続きの概要
申立人
・遺言書の保管者
・遺言書を発見した相続人
申立先
・遺言者(亡くなった方)の最後の住所地の家庭裁判所
申立てに必要な費用
・遺言書1通につき収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手(管轄の家庭裁判所ごとに異なります。)
申立てに必要な書類
【全ての手続きに共通の書類】
①申立書
②遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
③遺言者の子で死亡している方がいる場合は、その子の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
【相続人が遺言者の父母・祖父母等の第二順位相続人の場合】
④遺言者の直系尊属(父母、祖父母等)死亡している方がいる場合は、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
【相続人が遺言者の配偶者のみの場合又は遺言者の兄弟姉妹(第三順位相続人)の場合】
④遺言者の父母の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
⑤遺言者の直系尊属(父母・祖父母)の死亡の記載のある戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
⑥遺言者の兄弟姉妹に死亡している方がいる場合,その兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
⑦代襲者としての甥姪に死亡している方がる場合,その甥姪の死亡の記載のある戸籍謄本
遺言書の検認手続きの期間
自筆証書遺言で家庭裁判所の検認が必要な場合、戸籍等の必要書類の収集、検認の申立てから手続きの終了まで最低でも1ヵ月程度の期間が必要になります。
この間、仮に亡くなった方の銀行預金口座が凍結されていて、引き出しや引き落としが出来ずに相続人にとって不利益になる可能性があることも考えられます。
そのような場合、公正証書で遺言を遺していれば、検認手続きを経ずに相続財産の名義変更手続きに使用することができ、速やかにその後相続手続きを進めることができます。
そのため、遺言書を作成するときには、公正証書遺言で作成することをお勧めしております。
遺言書の検認手続きにおいてよくある質問
Q.遺言書検認の当日、家庭裁判所に相続人全員が出席しなければなりませんか?
A.申立人以外の相続人に出席する義務はないので、全員が揃わなくても遺言書の検認手続きはできます。
Q.遺言書が封筒に入れられていて、封がしてあるのですが、勝手に開けても大丈夫ですか?
A.相続人であっても勝手に封筒を開封してはいけません。検認手続の期日に裁判所において、相続人の立会いのもと開封します。
Q.遺言書の検認申立をした際、他の相続人から遺言書は無効だと家庭裁判所に連絡が入ったみたいですが、影響はありますか?
A.遺言書の検認では、遺言書の内容の有効や無効を判断するものではありませんので、遺言書の検認手続自体には影響はありません。