株式会社の機関設計
会社の「機関」とは
株式会社には、株主総会や取締役をはじめとして、取締役会、監査役、会計監査人等さまざまな種類の機関があります。
会社は、対外的な活動によって利益を上げることを目的とする団体、つまり営利性を有する団体ですが、会社それ自体は形のない存在です。そのため、実際に会社の手足となって組織を運営する存在が必要になります。これが会社の「機関」と言われるものです。
株式会社では、会社の中で具体的に誰がどういった役割を果たすのかを明確に定めておかなければ、大きな組織体である会社を運営することはできません。そこで、機関をその役割に応じて分ける必要があります。
機関の分化
まず、会社は「所有と経営の分離」という形で表現されます。会社の所有者である株主は、必ずしも全員が会社経営の能力を持っているとは限りません。また、積極的に会社経営に参加しようとする意思を持っているとも限りません。そこで、そのような場合には、実際の会社の運営は、経営のプロである取締役や監査役などに任せようということになります。
株式会社の機関の種類
株式会社で設置される機関の種類としては、次のようなものがあります。
会社は機関設計の最低限のルールを守りながら設立し、企業の発展等に応じて必要な機関を選択しながら運営していくことになります。
①株主総会 | 株式会社の最高意思決定機関で、取締役・監査役の選任・解任など、株式会社の組織・運営・管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる必要的機関です。株主総会には、決算期ごとに開催される定時株主総会と必要に応じて開催される臨時株主総会があります。 |
---|---|
②取締役 | 株式会社の業務執行を行う機関です。 |
③取締役会 | 3人以上の取締役によって構成され、代表取締役の選任をはじめ重要な業務について意思決定を行う機関です。株主の数が多い場合などは取締役会を設置した方が会社としての意思決定を迅速に行うことができます。 |
④監査役 | 取締役の職務執行や会社の会計を監査する機関です。 |
⑤監査役会 | 3人以上の監査役(うち半数以上は社外監査役)で構成され、監査方針の決定や監査報告の作成などを行う機関です。 |
⑥委員会 | 主に大企業において機動的な経営と実効的な監督を可能にするために設けられる機関で、指名委員会・監査委員会・報酬委員会からなります。 |
⑦会計監査人 | 主に大企業において計算書類等の監査を行う機関で、公認会計士または監査法人に限定されています。 |
⑧会計参与 | 新会社法で新設された機関で、取締役と共同して計算書類の作成などを行う機関です。 |
これまでの株式会社・有限会社の機関設計のルール
これまで、株式会社は有限会社に比べて厳格な機関設計の定めがなされており、取締役会および監査役の設置義務(有限会社では、取締役設置不可、監査役設置任意)、取締役3人以上の設置義務(有限会社では1人でも設立可)など厳しい定めがありました。このため、有限会社と実態として差のない小規模な株式会社では、名前だけの取締役や監査役が設置されるのどの問題があり、無駄なコストもかかっていました。
<これまでの制度の場合>
機関 | 株式会社 | 有限会社 |
---|---|---|
取締役会 | 必ず設置 | 設置できない |
監査役 | 必ず設置 | 任意設置 |
取締役数 | 3名以上 | 1名以上 |
任期 | 取締役2年、監査役4年 | 制限なし |
<新会社法の場合>
機関 | 株式会社 | 有限会社 |
---|---|---|
取締役会 | 任意設置 | 新規設立できない |
監査役 | 任意設置 | |
取締役数 | 1名以上 | |
任期 | 2年~10年 |
株式会社の機関設計の基本ルール
会社法は、株式会社の機関設計について最低限のルールを定めています。
株式会社の機関設計の基本ルールは以下のとおりです。
すべての株式会社には、必ず株主総会及び取締役を置かなければならない
会社法では、株式会社の機関について、出資者が1人で設立し、会社を運営することができるようにするため、株主総会と取締役だけの会社を基本とし、株主総会および取締役1名が必須機関となります。
会社の状態、選択によって設置義務がある機関
会社法では基本的に各会社が機関設計を自由に選択することを認めていますが、一定の事由により、設置が義務付けられる機関があります。
①次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない
a 公開会社
b 監査役会設置会社
c 監査等委員会設置会社
d 指名委員会等設置会社
②取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)は、監査役を置かなければならない
ただし、公開会社でない会計参与設置会社においては、監査役を置かなくてもよい
③会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)は、監査役を置かなければならない
④監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはないない
⑤監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければならない
⑥指名委員会等設置会社は、監査等委員会を置いてはならない
⑦大会社が公開会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない
⑧公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない
※公開会社
株式について譲渡制限のない株式会社
(その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社)
※大会社
資本金5億円以上または負債の額が200億円以上の会社
フロンティア司法書士事務所にご相談ください
株式会社の機関設計には、いくつかのルールがあり、また例外も存在します。ご自分の会社がどのパターンを選択できるか、機関設計の変更にはどのような手続きを取ったらよいかなど、お気軽に司法書士にご相談ください。