財産分与による土地・建物の名義変更登記
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際または離婚後に分けることをいいます。離婚をした一方当事者は、離婚をした相手方に対して財産の分与を請求することができます。そして、分与した財産が不動産(土地・建物)である場合、財産分与による不動産(土地・建物)の名義変更登記を行います。そして、財産分与による名義変更登記は、原則、現在の所有者と、財産分与を受ける方の共同申請により行い、実際に登記申請ができるのは、離婚届の提出後になります。
そのため、離婚届の提出後に登記手続きをしようとしても、相手方の協力を得るのが難しいことも考えられるため、財産分与協議書や登記必要書類の作成など事前に準備しておく必要があります。
財産分与登記の必要書類
財産分与による名義変更登記の必要書類は、協議離婚による場合と、調停など裁判上の離婚による場合とで異なります。
協議離婚の場合
1.財産分与を受ける方(登記権利者)
(1)住民票
(2)印鑑(認め印)
(3)運転免許証、パスポート等の身分証
2.財産分与をする方(登記義務者)
(1)登記済権利証又は登記識別情報通知
(2)印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
(3)固定資産税評価証明書(最新の年度のもの)※1
(4)離婚の記載のある戸籍謄本(離婚日の確認のため)
(5)住民票又は戸籍の附票(登記簿上の住所から移転している場合)
(6)印鑑(実印)
(7)運転免許証、パスポート等の身分証
上記の他に、権利者及び義務者双方とも登記原因証明情報、司法書士への委任状が必要になりますが、どちらも司法書士が作成致します。
※1 固定資産税評価証明書
固定資産税評価証明書は、東京23区の場合は都税事務所、その他は市区町村役場で取得できます。固定資産税評価証明書は、登記名義人が取得することができますが、登記名義人以外の方が取得する場合は、委任状が必要になります。
裁判上の離婚(調停、審判、訴訟)の場合
調停、審判、訴訟など裁判上の離婚の場合、相手方(登記義務者)の協力を得ることなく、財産分与を受ける方(登記権利者)が単独で登記申請をすることができます。
登記権利者による単独申請が可能なのは、調停調書等に次のような記載がある場合です。「申立人は、相手方に対し、離婚に伴う財産分与として、別紙物件目録記載の不動産を譲渡することとし、本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする」。
財産分与を受ける方(登記権利者)
(1)調停調書、審判書、和解調書等(登記原因証明情報)
(2)住民票
(3)固定資産税評価証明書(最新の年度のもの)
(4)印鑑(認め印)
(5)離婚の記載のある戸籍謄本(離婚日の確認のため)
上記の他に、司法書士への委任状(権利者のみ)が必要になりますが、こちらも司法書士が作成致します。
不動産の名義変更による登録免許税
離婚届の提出後、財産分与による不動産の名義変更手続きを行う際、法務局へ登録免許税を納付する必要があります。
固定資産税評価額 × 2% (20/1000)
例えば、2,000万円の不動産の財産分与を受ける際には、40万円の登録免許税を納付する必要があります。
また、夫婦で不動産を共有していた場合には、実際に移転する持分の価額で登録免許税を計算します。
例えば、夫婦で2,000万円の不動産を2分の1ずつ共有していた場合で、夫婦どちらかの持分の全部を他方に移転する際には、2,000万円の2分の1である1,000万円が基準になります。つまり、登録免許税は20万円となります。
(固定資産税評価額×持分) × 2% (20/1000)
財産分与する方の住所・氏名変更
財産分与する方(登記義務者)の住民票上の住所が、登記簿上の住所と異なっている場合、財産分与による名義変更登記の前提として、所有権登記名義人の住所変更登記が必要です。また、裁判上の離婚(調停、審判、訴訟)の場合で、登記簿上の住所が、調停調書記載の現住所と異なる場合にも所有権登記名義人の住所変更登記が必要になります。ただし、裁判上の離婚の場合には、相手方(登記義務者)の協力を得ずに行うことができます。
さらに、氏名が変更になっている場合も、同様に事前の変更登記が必要になります。
その際には、住所変更の経緯が分かる住民票又は戸籍の附票、氏名変更が分かる戸籍謄本が必要になります。